【民法総則】意思表示による権利変動

民法
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1. 意思表示

法律行為が有効に認められるために必要な絶対条件とは何でしょうか??

我が国の民法上では、法律行為が有効に認められるためには「意思表示」が必要不可欠な要件とされています。「意思表示」とは、一定の法律効果の発生を欲する意思を外部に表示する行為を指し、下記の要素から構成されます。

1-1. 効果意思

「効果意思」とは、「一定の法律効果の発生を欲する意思」とされます。例えば、「この商品が欲しい」即ち、「代金を支払うことで、その商品の所有権・処分権が欲しい」と意欲することです。

1-2. 表示意思

上記で説明した「効果意思(一定の法律効果の発生を欲する意思)」を、「外部に表示しよう」という意思です。

1-3. 表示行為

上記で説明した「表示意思」を実際に外部に示す行為です。例えば、「商品が欲しい旨を店員に伝え、実際に金銭を支払う」ことです。

なにやら難解なことを羅列した様ですが、要は、

  1. 「(心の中で)あ、この商品欲しい」(効果意思)
  2. 「(心の中で)この商品欲しいから店員に言お」(表示意思)
  3. 「(実際に)あ、すみません、この商品ください」(表示行為)

ということですね!民法上、有効な法律行為に不可欠な意思表示は、これらの要素で構成されています。

2. 意思表示の効果発生時期 – 到達主義

前章で意思表示とはなんぞや、を説明しました。

では、民法上では意思表示による効果はどのタイミングで発生するのでしょうか??

この点、我が国の民法では「到達主義」を採用しています。

民法第97条(隔地者に対する意思表示)
  1. 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
  2. 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
  3. 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

民法第97条第1項では、「意思表示は相手方に到達した段階で効力を生ずる」と規定しています。即ち、何らの法律行為を生じさせようとする時、単に意思表示をしただけでは足りず、sの意思表示が相手方に到達することが必要となります(←当たり前ですね)。

2-1. 「相手方に到達」の意義

一口に「相手方に到達」と言っても、何を以て「到達」とするのでしょうか??相手方の耳に入ればそれで終わりなのでしょうか?メールであれば相手方の受信箱に入った時?

民法上に明文の規定はありませんが、「意思表示が到達した」と見做されるためには、その意思表示が「相手方の支配権に入る」ことを必要とする、解されています。

即ち、意思表示はそれ自体が相手方に直接了知されることを必ずしも必要とはせず、例えば、「意思表示の相手本人ではなく、その家族が意思表示を受け取った」場合でも、本人は当該意思表示の家族による受領を知ろうと思えば知ることができる訳ですから、「意思表示が到達した」と評価されます。重要判例:最判昭36・4・20

2-2. 相手方や相手方の所在が知れない場合の意思表示

意思表示を到達させたい相手方や、その所在がわからない場合、どのように意思表示をその相手方に到達させたら良いのでしょうか?何か方法はないのでしょうか??

民法ではこの場合を下記の通り規定しています。

民法第98条(公示による意思表示)
  1. 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
  2. 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
  3. 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
  4. 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
  5. 裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

例え表意者が相手方を知らない、若しくはその所在を知らなくても、意思表示を相手方に到達させる手段はしっかりと民法に規定されています!それがこの「公示による意思表示」です。

相手方やその所在を知らない場合は、公示によって意思表示を到達させることができます。公示とは「一定の事柄を周知させる目的で、公衆が知ることのできる状態におくこと」を指し、民法では、

  1. 裁判所の掲示場での掲示並びに官報への記載
  2. 市役所や区役所といった公的機関の掲示場に掲示

の2パターンが規定されています。

そしてこれらの方法で行われた公示は、

  1. 最後の官報への記載日
  2. 官報への掲載に代わる掲示を始めた日

から2週間が経過した時点で、相手方に到達したものと見做されます。相手方が実際にその掲示を目にしようがしまいが、上述の日から2週間が経過した時点で、「意思表示は到達した」と見做される訳ですね。

ただし!表意者がその相手方を知らなかったことに関して過失がある場合(不注意で知らない場合)には、この公示による意思表示の到達の効果は発生しません。

3. まとめ

今回は「意思表示とその効果の発生時期」に関してみてきました。下記にて今回の内容をまとめてみましょう。

  1. 法律行為が有効に認められるためには、「意思表示」が必要不可欠な要件である。
  2. 意思表示は、「効果意思」、「表示意思」、「表示行為」によって構成される。
  3. 意思表示は、相手方にその意思表示が到達した段階で効力を生じる(到達主義)。
  4. 明文規定はないが、意思表示が相手方の支配圏に入った段階で「意思表示が到達した」と見做される(重要判例:最判昭36・4・20)。
  5. 相手方や相手方の所在が知れない場合は、公示の方法を用いて意思表示を伝達することができる。
  6. 公示には裁判所の掲示場に掲示し、官報に記載する方法と、市役所や区役所等の施設の掲示場に代わりに掲示する方法とがある。
  7. 公示による意思表示は、最後に官報に記載された日若しくはそれに代わる掲示が市役所等にされた日から2週間を経過した段階で、相手方に到達したと見做される。
  8. 相手方、相手方の所在を知らなかったことに関して表意者側に過失があった場合は、公示による意思表示は効果を生じない。

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