【民法総則】制限行為能力者 – 被補助人

民法
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【民法総則】意思能力と行為能力」で、民法における4つの「制限行為能力者」の形態がある、という事を説明しました。

この投稿では、「被補助人」について詳しくみていきます。

1. 被補助人の要件

民法では、被補助人を下記の様に規定しています。

民法第15条(補助開始の審判)
  1. 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
  2. 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  3. 補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。

民法では被補助人を「精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分である者」と規定しています。これまでみてきた「成年被後見人」、「被保佐人」よりは精神障害等の程度は軽いものの、単独で法律行為を行うには「事理弁識能力が不十分である」と判断される人のことを指します。

なお、ここで大切な事は

「被補助人=必ずしも制限行為能力者ではない」

ということです。これは以降の「保護者の同意権」の節で詳しく解説します!

なお、成年被後見人、被保佐人と異なり、家庭裁判所が被補助人に対して「補助開始の審判」を下すには、下記の条件を満たす必要があります。

    1. 本人以外の者により、家庭裁判所に保佐開始の審判を請求する場合、その請求に対して本人の同意を得なければならない。
    2. 補助開始の審判は、民法第17条第1項、若しくは民法第876条の9第1項の審判と共にしなければならない。

下記で詳しくみていきましょう。

1-1. 補助開始の審判に際しての本人の同意

民法第15条第1項では、「補助開始の審判」を請求できる者には、本人以外にも「配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官」が含まれています。

上述の「本人以外の者」によって家庭裁判所に補助開始の審判の請求をする際は、必ず「本人の同意」を必要とします。

被補助人の自己決定権を尊重した結果の配慮として、この様な規定が設けられています。

1-2. 補助開始の審判と同時に必要な審判

民法第15条第3項では、「補助開始の審判は、民法第17条第1項、又は民法第876条の9第1項の審判と共にしなければならない」と規定しています。つまり、補助開始の審判は、それ単体では下すことはできないということですね!

民法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
  1. 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
  2. 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  3. 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
  4. 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
民法第876条の9(補助人に代理権を付与する旨の審判)
  1. 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
  2. 第八百七十六条の四第二項及び第三項の規定は、前項の審判について準用する。

上記条文の詳細は、後述の「補助人の代理権」と「補助人の同意権」で詳しく解説しますが、要は補助開始の審判に際しては、

    1. 補助人に被補助人の特定の法律行為に関する同意権
      又は
    2. 補助人に被補助人の特定の法律行為に関する代理権

を付与する審判の何れかを共にしなければならない、ということです。

2. 被補助人の保護者

被補助人の保護者は「補助人」です。補助人は以下の条文で規定されています。

民法第16条(被補助人及び補助人)
補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
民法第876条の7(補助人及び臨時補助人の選任等)
  1. 家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任する。
  2. 第八百四十三条第二項から第四項まで及び第八百四十四条から第八百四十七条までの規定は、補助人について準用する。
  3. 補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、補助監督人がある場合は、この限りでない。

ここで大切なことは、

補助人=必ずしも被補助人の法定代理人ではない

ということです。これは次節以降で詳しくみていきます。

3. 保護者の代理権

被補助人の保護者である補助人は、原則として被補助人の法律行為の代理権を有しません(=これが前節で「補助人=必ずしも被補助人の法定代理人ではない」と言った所以です)。

補助人が代理権を有するには、民法第876条の9で定められる、「家庭裁判所による代理権付与の審判」が必要となります。

民法第876条の9(補助人に代理権を付与する旨の審判)
  1. 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
  2. 第八百七十六条の四第二項及び第三項の規定は、前項の審判について準用する。

この部分ですね!この「補助人に対する代理権付与の審判」には、同条第2項の制約(民法第876条の4第2項及び第3項)がかかっています。

民法第876条の4(保佐人に代理権を付与する旨の審判)
  1. 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
  2. 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  3. 家庭裁判所は、第一項に規定する者の請求によって、同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

民法第876条の4は、保佐人に対する代理権付与に関する条文でした。この条文の第2項と3項が補助人に対する代理権付与の審判の際にも準用される、

即ち

    1. 本人以外が、家庭裁判所に補助人に対する代理権付与の審判の請求をする場合は、必ず本人の同意を得なければならない。
    2. 補助人への代理権付与の審判は、特定の者の請求により全部又は一部取り消すことができる。

上記2点が、補助人への代理権付与の際にも適用されるということです。

ここでもうお分かりの様に、補助人が被補助人の法律行為に関する代理権を持つには「本人の同意の上、家庭裁判所の許可が必要」という事になります。

つまり、「補助人に選任されたからと言って、当然に被補助人の法定代理人になるわけではない」という事です。

4.保護者の同意権 

被補助人の保護者である補助人には、資源的に「被補助人の法律行為に関する同意権」は与えられていません。

では補助人に被補助人の法律行為に関する同意権が与えられるのはどんな時か?民法第17条では、下記のように規定しています。

民法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
  1. 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
  2. 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  3. 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
  4. 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

ただし、補助人に付与される同意権は、民法第13条の第1項に定められる「特定の法律行為」の一部に限られます。

【抜粋】民法第13条第1項
  1. 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

    一.元本を領収し、又は利用すること。
    二.借財又は保証をすること。
    三.不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
    四.訴訟行為をすること。
    五.贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
    六.相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
    七.贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付贈与を承認すること。
    八.新築、改築、増築又は大修繕をすること。
    九.第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
    十.前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

4-1. 補助人に与えられる同意権の範囲

補助人の同意権の範囲は、被補助人の法律行為全てにかかるわけではありません。民法第13条に定められる、「特定の法律行為」の一部に限られます。

逆を言えば、それ以外の法律行為に関しては、被補助人は補助人の同意を得ることなく、単独で有効にその法律行為を行うことができます。

4-2. 被補助人=必ずしも制限行為能力者ではない!?

第1章で、「被補助人=必ずしも制限行為能力者ではない」と述べました。

ここで思い出して欲しいのは、「行為能力」の定義です。

行為能力とは「単独で有効な法律行為を行うことができる能力」のことでした。

ここで「単独」という言葉を強調したのは、この言葉が「行為能力の制限」に大きく関わってくるからです。

仮にある者が行うある法律行為に関して、「第三者の同意がなければ法律行為は有効でなく、取り消すことができる」という制約がついたらどうでしょう?その者は、その法律行為に関しては必ずその第三者の同意を取り付ける必要があり、単独でその法律行為を有効に完結させることができませんよね?これが、「行為能力(単独で法律行為を行うことができる能力)」の制限です。

話を元に戻しましょう。

これまでみてきたように、補助人には資源的に「被補助人の法律行為に関する同意権」は与えられていません。家庭裁判所の審判があってはじめて、補助人が同意権を持つことができます。

即ち、民法第17条に基づいて家庭裁判所が補助人に同意権を与えない限り、被補助人は全ての法律行為を単独で行うことができ、「制限行為能力者」としてはみなされないということです(=これが「被補助人=必ずしも制限行為能力者ではない」と言った所以です)。

民法第17条に基づき、補助人の同意を得なければならない旨の審判を下された法律行為(民法第13条に定められる法律行為に限る)が補助人の同意を得ずに行われた場合、その法律行為は取り消すことができます。

5. 被補助人が単独で行えない法律行為を単独でした場合

民法第17条によって、特定の法律行為に関して補助人の同意を得なければならない旨の審判を受けた被補助人が、当該特定の法律行為を補助人の同意を得ずに行った場合、その後の処理は下記の4パターンが考えられます。

5-1. 本人による取消し

被補助人が単独で行えない法律行為を単独で行った場合、その法律行為は本人が取り消すことができます。

民法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
  1. 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
  2. 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  3. 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
  4. 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
民法第120条(取消権者)
  1. 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
  2. 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

民法第17条第4項にて「補助人の同意を得なければならない行為なのにも関わらず、被補助人がその同意を得ることなく単独で行った行為は、取消可能である」旨を規定しており、民法第120条では、「当該法律行為の取消権者」を規定しています。

民法第120条では、「制限行為能力者(即ちここでは被補助人)が行為を取り消すことができる」と規定していますから、この条文に基づき、被補助人が法律行為を取り消すことができるという事になります。

5-2. 保護者による取消し

被補助人が単独で行えない法律行為を単独でした場合、その法律行為はその本人のみならず、その保護者(補助人)も取り消すことができます。

民法第120条(取消権者)
  1. 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
  2. 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

前節にて「補助人は必ずしも被補助人の法定代理人になるわけではない」旨を説明しました(補助人の代理権は、被補助人の同意を得た上で家庭裁判所に「代理権付与の審判の請求」をしなければなりません)。

従って、代理権が付与されていない補助人に関しては、単に「民法第13条に規定される特定の法律行為の一部に対する同意権」を持つに留まりますので、民法第120条第1項の「同意をすることが〜」以降が該当します。

5-3. 保護者による追認

3パターン目は「追認」です。

補助人には、被補助人が行った法律行為に対する追認権が認められています根拠条文は以下の通りです。

民法第122条(取り消すことができる行為の追認)
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。

民法第120条は前節で確認しました。第120条に規定されるものとは、

  1. 制限行為能力者
  2. 制限行為能力者の代理人
  3. 制限行為能力者の承継人
  4. 同意をすることができる者

でした!

即ち、被補助人の特定の法律行為に関して同意をすることができる者(=即ち補助人)、若しくは代理権を付与された補助人が、追認権を行使できます。

5-4. 本人による追認

被補助人による取消可能な法律行為の取り消しは、被補助人本人による追認も可能です。

民法第122条(取り消すことができる行為の追認)
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
民法第124条(追認の要件)
  1. 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
  2. 次に掲げる場合には、前項の追認は、取り消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。

    一.法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認するとき
    二.制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。

繰り返しになりますが、まず民法第122条です。122条(厳密には参照先の120条)では、「制限行為能力者本人」が追認権を有すると規定されていました。

その追認権を行使する際の「要件」を定めた条文が民法第124条です。

つまり、民法第122条で追認権を持っていても、124条の要件を満たさなければ、追認権は行使できません。

では、被補助人本人が追認権を行使するための要件はなんでしょうか?この要件を規定しているのが、同条の第1項です。

第1項では、「追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後」でないと、追認はできない、と定めています。

即ち、「制限行為能力者である被補助人が行為能力を回復し、かつ、その本人が当該法律行為に関して取消権がある事を認知した後」でないと、追認はできないと規定しています。

つまり、本人が取り消すことができる法律行為を追認するには、その本人が行為能力を回復して、被補助人でなくなり、かつ取消権を有することを認知する事が必要となります(行為能力の回復に関しては、本記事の最後の項を参考してください)。

なお、被補助人は民法第124条第2項第2号に基づき、補助人の同意を得た上であれば、行為能力の回復を待たずして本人が追認をすることができます。

6. 相手方の催告権

被補助人の相手方の催告権につき、まずは条文からみていきます。

民法第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)
  1. 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
  2. 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
  3. 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
  4. 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

被補助人に対する催告権は下記の3パターンです。

催告の相手方 催告の時期 確答の期限 期限内に確答がない
場合の効果
本人 行為能力者となった後 最低1ヶ月以上 当該法律行為を
追認したとみなす
補助人 制限行為能力者である間 最低1ヶ月以上 当該法律行為を
追認したとみなす
本人 制限行為能力者である間 最低1ヶ月以上 補助人の追認を得るべき催告をすることができる。期限内に確答がない場合は、当該法律行為を取り消したとみなす

7. 行為能力の回復

最後に被補助人が行為能力を回復する要件をみていきましょう。

民法第18条(補助開始の審判等の取消し)
  1. 第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
  2. 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
  3. 前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判を全て取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

民法第18条では、「第十五条に規定する原因」、即ち「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である」状況が消滅したときは、一定の者からの請求によって補助開始の審判を取り消さなければならないとしています。

この「補助開始の審判」が取り消された時(かつ補助人に対する同意権付与の審判がされていた場合は、それが全て取り消された時)、被補助人は行為能力を回復し、制限行為能力者ではなくなります。

8. まとめ

被補助人に関する各項目につき、未成年者、成年被後見人、被保佐人と比較してまとめてみます。

  未成年者 成年被後見人 被保佐人 被補助人
制限行為能力者となる要件 成年に達していないこと 家庭裁判所による後見開始の審判(7条) 家庭裁判所による保佐開始の審判(11条) 家庭裁判所による補助開始の審判(15条)
保護者 親権者(818条)
親権を行う者がいない時は未成年後見人(838条)
成年後見人(8条) 保佐人(12条) 補助人(16条、876条の7)
保護者の代理権 あり(824条/859条)
★ただし、子の行為を目的とする債務を生ずべき時は、
本人の同意が必要
あり(859条/859条の3)
★ただし、成年被後見人の行為を目的とする債務を生ずべき場合は本人の同意が必要
★ただし、成年被後見人の住居用不動産に関する処分については家庭裁判所の許可が必要

原則なし
★ただし、「特定の法律行為」については、被保佐人本人の同意の上、家庭裁判所が保佐人に代理権の付与が可能(876条の4)

原則なし
ただし、「特定の法律行為」については、被補助人本人の同意の上、家庭裁判所が補助人に代理権の付与が可能(876条の9)

保護者の同意権 あり(5条)
★ただし、「単に権利を得、義務を免れる行為」、「法定代理人が目的を定め、若しくは定めずに処分を許した財産の処分」、「未成年者が営業を許可された場合、その営業に関わる法律行為」に関しては保護者の同意は不要
なし 特定の法律行為に対してのみあり(13条) 原則なし
★ただし、「特定の法律行為」については、被補助人の同意の上、家庭裁判所が補助人に同意権の付与が可能(17条)
制限行為能力者が単独で行えない法律行為を単独で行った場合 本人の取消権(5条/120条)
保護者の取消権(5条/120条)
本人の追認可能性(122条/124条)
保護者の追認権(122条)
本人の取消権(9条/120条)
保護者の取消権(9条/120条)
本人の追認可能性(122条/124条)
保護者の追認権(122条)
本人の取消権(13条/120条)
保護者の取消権(13条/120条)
本人の追認可能性(122条/124条)
保護者の追認権(122条)
本人の取消権(17条/120条)
保護者の取消権(17条/120条)
本人の追認可能性(122条/124条)
保護者の追認権(122条)
相手方の催告権 あり(20条) あり(20条) あり(20条) あり(20条)
行為能力の回復 成年に達すること 家庭裁判所による後見開始の審判の取消し(10条) 家庭裁判所による保佐開始の審判の取消し(14条) 家庭裁判所による保佐開始の審判の取消し(18条)

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